「先生に悪い気がして、なかなか言い出せないんです…」「他の先生の意見も聞いてみたいけれど、失礼にあたりますよね?」
こんにちは。東京都文京区で「おだぎり歯科クリニック」を開業しております、歯科医師の小田切陽子です。治療方針について大切なご説明をしていると、患者さんから時折、このようなお悩みを打ち明けられることがあります。
ご自身の体のことだからこそ、最善の治療を受けたい。でも、お世話になっている先生との関係も大切にしたい。その板挟みで、お一人で悩んでいらっしゃる方は、実は少なくないのかもしれません。
この記事では、そんな患者さんの心の葛藤にそっと寄り添いながら、「セカンドオピニオン」について、私たち歯科医師が日々の診療で感じている「率直な気持ち」をお話ししたいと思います。この記事を読み終える頃には、きっと皆さんの不安が少しでも軽くなり、安心して次の一歩を踏み出す後押しになればと願っています。

目次
「先生、気を悪くしませんか?」診察室でよく聞かれる、切実な質問
先日も、長年のお付き合いになるCさんが、少し言いにくそうに切り出されました。
Cさん: 「先生、先日ご提案いただいたインプラントの件ですが…、正直、まだ少し迷いがありまして。もし、他の歯医者さんのお話も聞いてみたいと言ったら…先生は、気を悪くされますか?」
Cさんのように、真剣に治療と向き合っている方ほど、このように誠実に悩まれるものです。大切な歯の将来を決めるのですから、迷うのは当然のことですよね。
こういう時、私はいつも、まず結論からお伝えすることにしています。
「どうぞ、遠慮なさらないでください。むしろ、Cさんが心から納得できる治療法を見つけるために、とても大切なことだと思いますよ」と。
なぜ、私たち歯科医師がセカンドオピニオンを歓迎するのか
「でも、本当に?」と、まだ半信半疑の方もいらっしゃるかもしれませんね。私たち歯科医師が、セカンドオピニオンを「失礼だ」と感じるどころか、むしろ歓迎するのには、ちゃんとした理由があるのです。
理由1:ご自身の体と治療に、心から納得してほしいから
治療というのは、私たち医療者と患者さんが、二人三脚で同じゴールを目指す長い道のりのようなものです。その道のりを最後まで歩き抜くためには、「この治療法で頑張ろう」という患者さんご自身の強い意志と納得感が、何よりも大切になります [1]。
セカンドオピニオンは、その納得感を得るための、いわば「羅針盤」のようなもの。別の専門家の意見を聞くことで、最初の提案が腑に落ちることもあれば、新たな道が見つかることもあります。どちらにせよ、ご自身で選んだ道だからこそ、前向きに治療に取り組めるのです。
理由2:歯科医師にも「専門分野」や「治療哲学」があるから
実は、「歯科医師」と一括りに言っても、それぞれに得意な分野や、大切にしている治療の考え方(治療哲学)があります [2]。例えば、インプラント治療を数多く手がけてきた先生もいれば、歯の根の治療(根管治療)を専門的に学んできた先生もいます。
そのため、同じお口の状態を診ても、A先生は「抜歯してインプラント」を、B先生は「特殊な技術で歯を残す」という、異なる治療法を提案することは、決して珍しいことではありません。それは「どちらが正しいか」という問題ではなく、アプローチの違いなのです。複数の選択肢の中から、ご自身の価値観に最も合うものを選んでいただくことが、何より重要だと考えています。
理由3:結果として、信頼関係がより深まることも多いから
意外に思われるかもしれませんが、セカンドオピニオンは、私たち主治医との信頼関係を、結果的に深めてくれることも少なくありません。
他の先生の意見を聞いた上で、「やっぱり、小田切先生の提案が一番しっくりきました」と戻ってきてくださる患者さんもたくさんいらっしゃいます。その時、患者さんの表情は、最初の説明の時よりもずっと晴れやかです。そのお顔を拝見すると、私たちも「ああ、この方と一緒に、これから頑張っていける」と、改めて身が引き締まる思いがするのです。
こんな時は、セカンドオピニオンを考えてみませんか?
具体的に、どのような場面でセカンドオピニオンを検討すると良いのでしょうか。いくつか例を挙げてみますね。
- Case1:抜歯や、大掛かりな治療を提案された時
「もう、この歯は抜くしかありません」と言われた時ほど、ショックなことはありませんよね。本当に他に方法はないのか、別の視点から意見を聞いてみる価値は十分にあります。 - Case2:自由診療など、高額な治療の選択に迷う時
インプラントや矯正治療など、費用も期間もかかる治療は、人生における大きな決断の一つです。複数の選択肢を比較検討し、費用対効果も含めてじっくり考える時間が必要です。 - Case3:説明は受けたけれど、どうにも気持ちが晴れない時
「理由はわからないけれど、なんとなく不安…」その直感は、とても大切です。言葉にならないモヤモヤを抱えたまま治療に進むべきではありません。別の先生に話すことで、その不安の正体が明らかになることもあります。
上手な「伝え方」と「受け方」のヒント
そうは言っても、やはり「どう伝えれば…」と悩んでしまいますよね。少しだけ、ヒントをお伝えします。
主治医の先生への、誠実な伝え方
大切なのは、隠したりせず、正直に、そして誠実に伝えることです。
「先生、先日のご説明、ありがとうございました。とてもよく理解できたのですが、自分のことなので、もう少しだけ時間をかけて考えたくて。もしよろしければ、他の先生のご意見も一度伺ってみたいのですが、可能でしょうか?」
このように、感謝の気持ちと、あくまで「自分のために考えたい」という姿勢を伝えることで、角が立つことはまずありません。むしろ、真剣に考えてくれていることを、嬉しく思う先生の方が多いはずです [3]。
セカンドオピニオン先の先生に聞くべきこと
セカンドオピニオンを受ける際は、事前に聞きたいことをメモしていくと良いでしょう。「主治医からは〇〇という治療を提案されていますが、先生はどう思われますか?」「他に考えられる治療法はありますか?」など、ポイントを整理しておくと、有意義な時間になります。
最終的に、ご自身で決めるということ
様々な意見を聞くと、かえって迷ってしまうこともあるかもしれません。しかし、最終的にどの治療法を選ぶかを決めるのは、他の誰でもない、患者さんご自身です。その決断を、私たちは専門家として全力でサポートします。
私たちが一番大切にしていること
治療法の優劣だけが、すべてではありません。患者さんのライフスタイル、価値観、そして「これからどんな風に過ごしていきたいか」という想い。それらすべてを考慮した上で、あなたにとっての「最善」を一緒に見つけ出すこと。それが、私たちの最も大切な役割だと考えています。
私たちは、単に歯を治すだけの存在ではなく、患者さんの人生に寄り添うパートナーでありたいのです。
まとめ
セカンドオピニオンは、主治医を疑う行為では決してありません。むしろ、ご自身が納得できる最善の治療法を、主体的に選ぶための「賢い選択」であり、医療者に認められた正当な権利です [4]。
もし今、少しでも心に迷いや不安を抱えているのなら、どうぞ一人で悩まず、その気持ちを主治医の先生に打ち明けてみてください。その勇気が、きっとあなたをより良い未来へと導いてくれるはずです。