患者さんが教えてくれた「歯医者さんに行きたくなる理由」

こんにちは。東京都文京区で「おだぎり歯科クリニック」を開いております、歯科医師の小田切陽子です。

突然ですが、皆さんは「歯医者さん」はお好きですか?

おそらく、多くの方が「うーん…」と首を傾げたり、「できれば行きたくない場所ですね」と苦笑いされたりするのではないでしょうか。日々の診療の中でも、「あのキーンという音がどうも苦手で」「昔、痛い思いをしたのがトラウマで…」といったお声を本当にたくさん耳にします。

歯医者に対して「痛い」「怖い」というイメージをお持ちになるお気持ち、とてもよく分かります。

でも、もし「歯医者さんに行くのが、実は楽しみなんです」という方が増えているとしたら、少し驚かれますか?

開業して20年近く、たくさんの患者さんとお付き合いさせていただく中で、ここ数年、そんな嬉しいお言葉をいただく機会が増えてきました。この記事では、私のクリニックに通ってくださる患者さんたちが、こっそり教えてくれた「歯医者さんに行きたくなる、ちょっと意外な理由」をご紹介したいと思います。

この記事を読み終える頃には、皆さんの心の中にある歯医者さんのイメージが、ほんの少しでも温かいものに変わるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

「痛い・怖い」はもう昔の話?変わりつつある歯医者さんの今

「歯医者さん=痛い場所」というイメージは、多くの方にとって根強いものかもしれません。でも、実は歯科医療の世界は日々進歩していて、皆さんが安心して治療を受けられるような工夫がたくさん生まれているんですよ。

進化する「痛みを抑える」治療技術

昔の治療で痛い思いをされた方ほど、今の技術には驚かれるかもしれません。例えば、麻酔注射ひとつとっても、昔とは大きく違います。

  • 表面麻酔: 注射の前に、歯ぐきにジェル状の麻酔薬を塗ることで、針が刺さる瞬間の「チクッ」とした痛みをほとんど感じなくさせます。
  • 極細の注射針: 注射針そのものが非常に細くなっているので、痛みを感じにくくなっています。
  • 電動麻酔器: コンピューター制御で、麻酔液をゆっくりと一定の圧力で注入します。これにより、麻酔液が入るときの圧迫されるような痛みを最小限に抑えることができるのです。

「いつ注射したか分からなかった」とおっしゃる患者さんも少なくありません。
また、治療においても、できるだけ歯を削らない、神経を残すという考え方が主流になってきています。 皆さんの大切な歯を、一日でも長く守るための技術が、今の歯医者さんのスタンダードになりつつあるんです。

「治療」から「自分をケアする場所」へ

もう一つ、大きく変わってきたのが、歯医者さんの「役割」です。
これまでは「虫歯や歯周病になってから治療に行く場所」でした。しかし今は、「病気にならないために、健康を維持するために通う場所」へとシフトしています。

その変化は、クリニックの雰囲気にも表れています。消毒液の匂いがする無機質な空間ではなく、アロマが香ったり、リラックスできる音楽が流れていたり。 まるでカフェやサロンのような、心地よい空間づくりを大切にする歯科医院がとても増えました。

「治療」という少し緊張する言葉から、「ケア」や「メンテナンス」へ。歯医者さんは、皆さんがもっと気軽に、そして前向きな気持ちで立ち寄れる場所に変わってきているのです。

患者さんが教えてくれた!歯医者さんに行くのが楽しみになる理由3選

さて、ここからは本題です。私のクリニックに通ってくださる患者さんたちが教えてくれた、「歯医者さんに行くのが楽しみになる理由」を3つ、具体的なエピソードと共にご紹介しますね。

理由1:「自分へのご褒美」としてのプロフェッショナルケア

「先生、私にとってここは、月に一度のエステサロンみたいなものなんです」

そう笑顔で話してくださるのは、IT企業でバリバリ働く40代のAさんです。Aさんは治療が終わった今も、毎月一度、歯のクリーニング(PMTC)のために必ず来院されます。

Aさんのエピソード
毎日忙しく、自分のことは後回しになりがちだったAさん。ある日、鏡に映る自分の疲れた顔と、コーヒーで少し黄ばんだ歯を見て、ふと「このままじゃいけない」と思ったそうです。勇気を出して検診に来られ、治療と合わせて専門家によるクリーニングを体験されました。
「終わった後の、歯がツルッツルになる爽快感がやみつきになっちゃって!口の中がさっぱりすると、心までリフレッシュできるんですよね。今では、この1時間が私にとって最高のデトックスタイムです」

Aさんがおっしゃるように、専門の機械とペーストを使って行う歯のクリーニング「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」は、格別の心地よさがあります。

  • 爽快感: 普段の歯磨きでは落としきれない汚れや細菌の膜(バイオフィルム)を徹底的に除去するので、お口の中が驚くほどスッキリします。
  • 審美性の向上: コーヒーや紅茶、ワインなどによる着色汚れも落とせるので、歯本来の自然な白さと輝きを取り戻せます。
  • 予防効果: もちろん、虫歯や歯周病、口臭の予防にも絶大な効果があります。

最近では、クリーニングに加えてホワイトニングをされたり、唇の保湿ケア(リップエステ)をされたりと、美容院やネイルサロンに通うような感覚で、お口のケアを楽しんでいらっしゃる方が増えています。月に一度、プロの手に身を委ねて自分を慈しむ時間。それが、歯医者さんに通う新しいモチベーションになっているようです。

理由2:「未来の自分への賢い投資」としての定期検診

「80歳になったら、主人と一緒に豪華客船で世界一周旅行をするのが夢なんです。その時に、何でも美味しく食べられないと楽しめませんからね」

そうお話ししてくださるのは、3ヶ月に一度、ご夫婦で定期検診に通われている60代のBさんです。Bさんにとって、定期検診は「未来の夢を叶えるための、賢い投資」なのだそうです。

Bさんのエピソード
数年前、お父様を誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で亡くされたBさん。その時、お口のケアが全身の健康に深く関わっていることを痛感したと言います。
「父は晩年、歯がほとんどなくて、食事もあまり楽しめていないようでした。お口の健康が、全身の病気や、ひいては生きる気力にまで影響するなんて…。だから私たちは、将来子どもたちに迷惑をかけないためにも、自分の歯でしっかり食べて、ずっと元気に過ごしたいんです」

Bさんのお話は、歯科医師として、そして一人の人間として、深く胸に響きました。
近年、様々な研究から、お口の健康が全身の健康と密接に繋がっていることが明らかになっています。

  • 歯周病と全身疾患: 歯周病菌が血管を通って全身に巡ることで、糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、さらには認知症などのリスクを高めることが分かっています。
  • 健康寿命との関連: 歯を多く保っている人ほど、健康寿命が長いという研究結果もあります。

そして、これはあまり知られていないかもしれませんが、定期的に歯のメンテナンスを受けている人の方が、結果的に生涯にかかる医療費が少なく済む、というデータもあるのです。

目先の治療費だけを見ると、検診費用がもったいないと感じるかもしれません。しかし、将来、大きな病気にかかったり、歯を失ってインプラントや高価な入れ歯が必要になったりすることを考えれば、定期検診は非常にコストパフォーマンスの高い「健康投資」と言えるのではないでしょうか。

理由3:「何でも話せる相談相手」との出会い

「先生、今度孫が生まれるんですけど、赤ちゃんの歯のケアっていつから始めたらいいんですか?」

私のクリニックには、親子3世代で通ってくださっているCさん一家がいらっしゃいます。Cさんのお母様から入れ歯のご相談を受けたり、Cさんご自身から口臭のお悩みをお聞きしたり、そしてお孫さんの歯が生えてくるのを楽しみに待ったり。まるで家族ぐるみのお付き合いです。

Cさんのエピソード
もともと歯医者が大の苦手だったCさん。初めて来院された時は、とても緊張した面持ちでした。しかし、治療方針をじっくり話し合い、一つひとつの治療を丁寧に重ねていくうちに、少しずつ心を開いてくださるように。
「ここに来ると、何でも話せちゃうんですよね。歯のことだけじゃなくて、ちょっとした体の不調とか、子育ての愚痴まで(笑)。私のことを全部わかってくれてる人がいるって、すごく安心します」

Cさんのように、信頼できる「かかりつけ歯科医」を持つことは、お口の健康を守る上で何よりも大切なことかもしれません。

自分の歯の状態や治療歴、生活習慣まで把握してくれている専門家がいる安心感は、何物にも代えがたいものです。 ちょっとしたお口の変化にもすぐに気づいてもらえますし、「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思うような些細な疑問も気軽に相談できます。

日本歯科医師会の調査では、約7割の方がかかりつけ歯科医を持っているというデータもあります。 治療の時だけでなく、一生涯にわたって健康をサポートしてくれるパートナー。そんな存在との出会いが、歯医者さんを「行かなくてはならない場所」から「頼れる、心強い場所」へと変えてくれるのです。

あなたにぴったりの「行きたくなる歯医者さん」を見つけるには?

ここまで読んで、「私もそんな歯医者さんに出会いたいな」と思ってくださった方もいらっしゃるかもしれません。最後に、あなたにとっての「行きたくなる歯医者さん」を見つけるためのヒントをいくつかお伝えしますね。

まずは「通いやすさ」から考えてみましょう

どんなに良い歯医者さんでも、通うのが大変だと足が遠のいてしまいます。ご自宅や職場から近い、診療時間が自分のライフスタイルに合っているなど、まずは無理なく通い続けられることが大切な第一歩です。

こんなポイントをチェック!信頼できる歯医者さん選び

通えそうな歯医者さんが見つかったら、ホームページを見たり、実際に訪れたりして、以下のような点をチェックしてみてはいかがでしょうか。

チェック項目具体的なポイント
コミュニケーション質問しやすい雰囲気か、説明は丁寧で分かりやすいか。あなたの話にしっかり耳を傾けてくれるか。
予防への考え方治療だけでなく、定期検診やクリーニングといった「予防」に力を入れているか。
衛生管理院内は清潔に保たれているか。スリッパや器具の滅菌など、感染対策は徹底されているか。
設備・技術痛みを抑える工夫をしているか。 歯科医師やスタッフが勉強会などで新しい情報を取り入れているか。

「相談」や「検診」だけでも大丈夫

いきなり治療はハードルが高い…と感じる方は、まずは「歯のクリーニング」や「検診」、「お口の相談」といった目的で予約してみるのがおすすめです。治療をせずに一度訪れてみることで、先生やスタッフの人柄、クリニックの雰囲気を肌で感じることができますよ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
かつての歯医者さんは、「痛い」「怖い」といったネガティブなイメージがつきまとう場所だったかもしれません。

しかし、今の歯医者さんは、

  • 自分を磨き、リフレッシュするための「ご褒美」の場所
  • 未来の健康で豊かな生活を守るための「投資」の場所
  • 何でも話せる安心の「パートナー」と出会える場所

…という、新しい価値を持つ場所に変わりつつあります。

もちろん、虫歯や歯周病の治療も私たちの大切な仕事です。でもそれ以上に、皆さんが生涯にわたってご自身の歯で美味しく食事をし、心からの笑顔で毎日を過ごせるよう、そのお手伝いをすることこそが、私たちの本当の役割だと考えています。

もし、この記事を読んで、ほんの少しでも歯医者さんへのイメージが変わったなら、ぜひお近くの歯科医院のドアを叩いてみてください。きっとそこには、あなたの健康を心から願う、頼もしいパートナーが待っているはずです。

お口のことで気になることがあれば、いつでも気軽に相談してくださいね。

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