20年間の診療で気づいた「歯が長持ちする人」の共通点

はじめまして。
歯科医師の小田切陽子と申します。

文京区で「おだぎり歯科クリニック」を開業して、早いもので20年近くが経ちました。

「先生、おかげさまで何でも美味しく食べられていますよ」。
定期検診でいらした80代の患者さんが、ピカピカに磨かれたご自身の歯を見せながら、嬉しそうにお話ししてくださいました。

20年間、様々な患者さんのお口を拝見していると、「この方は、きっと80歳になっても、90歳になってもご自身の歯で食事を楽しまれるんだろうな」と感じる方がいらっしゃいます。

そうした方々には、実はいくつかの分かりやすい共通点があるんです。

「将来も自分の歯で、美味しくご飯を食べ続けたい」。
「歯のケア、今のままで本当に大丈夫なのかな…?」。

もしあなたが少しでもそう感じているなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。

この記事では、私が日々の診療で確信した「歯が一生ものになる人」の秘訣を、7つの共通点としてご紹介します。
特別なことではありません。
誰でも今日から始められる、ささやかだけれどとても大切な習慣です。

驚くほど基本に忠実!歯が長持ちする人の「3つの口腔ケア習慣」

まず、歯が健康な方は、毎日のお口のケアがとても丁寧で、基本に忠実です。
高価な道具や特別な方法を使っているわけではないんですよ。

共通点1:自分に合った「一本の歯ブラシ」を大切に使いこなしている

歯が長持ちする方は、ご自身のお口に合った「かかりつけの歯ブラシ」とでも言うべき一本を持っています。
そして、その一本をとても上手に使って、歯を一本一本、丁寧に磨き上げています。

ドラッグストアに行くと、本当にたくさんの歯ブラシが並んでいますよね。
ヘッドの大きさ、毛の硬さ、形も様々です。

大切なのは、「なんとなく」で選ぶのではなく、ご自身のお口の状態や歯並びに合わせて選ぶこと。
そして、鉛筆を持つように軽く握り、優しい力で小刻みに動かすのが基本です。
ゴシゴシと力を入れて磨いてしまうと、歯ぐきを傷つけたり、歯の根元がすり減ったりする原因にもなってしまいます。

どの歯ブラシが良いか迷ったら、ぜひ、かかりつけの歯科医院で相談してみてくださいね。
きっとあなたにぴったりの一本が見つかるはずです。

共通点2:「歯と歯の間」こそ主戦場だと知っている(フロス・歯間ブラシの重要性)

歯ブラシだけで落とせる歯の汚れは、実は全体の約6割だと言われています。
残りの4割は、歯と歯の間に潜んでいるんです。

歯が長持ちする方は、この「歯と歯の間」こそが、虫歯や歯周病の最大の発生場所であることをよくご存知です。
だからこそ、毎日の歯磨きに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを使う習慣が当たり前になっています。

「毎日使うのは面倒…」と感じるかもしれません。
でも、フロスを使い始めると、歯と歯の間がいかに汚れているか、そのスッキリ感に驚くはずです。

最初は夜だけでも構いません。
歯ブラシでは届かない「主戦場」をきれいにすることが、お口の未来を大きく変えるのです。

共通点3:一日の終わりに「お口の大掃除」を欠かさない(夜のケアの重要性)

私たちの唾液には、お口の中の細菌を洗い流したり、虫歯菌の活動を抑えたりする大切な役割があります。
でも、寝ている間は唾液の分泌量がガクッと減ってしまうんです。

すると、お口の中では細菌がどんどん増殖して、虫歯や歯周病のリスクが急上昇します。

歯が健康な方は、このことを感覚的に理解されていて、一日の汚れはその日のうちにリセットする、という考え方が徹底されています。
夜、寝る前の歯磨きを「お口の大掃除」と位置づけ、フロスも使って一日で最も時間をかけて丁寧にケアしている方が本当に多いですね。

朝や昼の歯磨きが少し簡単になってしまっても、夜のケアさえしっかりできていれば、お口の健康は大きく崩れることはありません。

体の内側から歯を守る!「食生活」に隠された2つの秘訣

歯の健康は、お口の中のケアだけで決まるわけではありません。
毎日の「食べ方」も、実は歯の寿命に深く関わっているんです。

共通点4:「よく噛む」ことで、最強の”天然の歯磨き粉”(唾液)を分泌させている

先ほど、唾液の大切さについて少し触れました。
唾液は、お口の中の汚れを洗い流す「自浄作用」や、初期の虫歯を修復してくれる「再石灰化」など、素晴らしい力を持っています。

この最強の”天然の歯磨き粉”とも言える唾液をたくさん出すための最も簡単な方法が、「よく噛む」ことなんです。

歯が長持ちする方は、食事のペースが比較的ゆっくりで、一口一口を味わうように、しっかり噛んで召し上がっている印象があります。
意識して回数を数える必要はありませんが、「いつもより少しだけよく噛んでみようかな」と思うだけでも、お口の中の環境はきっと変わってきますよ。

共通点5:「だららだら食べ」をせず、お口に休息時間を与えている

お食事やおやつを食べると、お口の中は酸性に傾き、歯の表面からミネラルが溶け出す「脱灰(だっかい)」という状態になります。
それを修復してくれるのが、唾液の「再石灰化」作用です。

しかし、間食が多かったり、甘い飲み物を少しずつ長時間かけて飲んだりする「だらだら食べ」を続けていると、お口の中が常に酸性の状態になってしまいます。
これでは、唾液による修復が追いつかず、虫歯のリスクがどんどん高まってしまうのです。

歯が健康な方は、食事の時間をきちんと決めて、だらだらと食べ続けることがありません。
お口にもしっかりと休息時間を与えてあげることが、歯を内側から守ることにつながるんですね。

プロの力を最大限に活用!「歯科医院」との付き合い方がとても上手

最後の共通点は、私たち歯科医師との関わり方です。
歯が長持ちする方は、歯科医院を「治療に行く場所」ではなく、「健康を維持するために通う場所」だと捉えています。

共通点6:「痛くなる前に通う」のが当たり前になっている

「歯医者さんは、歯が痛くなったり、何か問題が起きたりしてから行く場所」。
そう思っている方も、まだ多いかもしれません。

しかし、歯が長持ちする方は、まったく逆の発想をしています。
「痛くならないように」「問題が起きないように」するために、定期的に歯科医院に通うのです。

虫歯も歯周病も、初期の段階では自覚症状がほとんどありません。
「痛い」「しみる」といった症状が出たときには、かなり進行してしまっているケースがほとんどです。

定期検診でプロのチェックを受けることで、トラブルを未然に防いだり、ごく初期の段階で対処したりすることができます。
これが、結果的にご自身の歯を長く守るための、最も賢い方法だと言えるでしょう。

共通点7:自分の歯の状態を「自分ごと」として、深く理解している

定期検診にいらっしゃる方の中でも、特に歯が健康な方は、ご自身のお口への関心が非常に高いと感じます。

「先生、前回指摘されたここの歯ぐき、フロスを頑張ったら引き締まってきましたかね?」
「この歯は昔治療したところだから、特に気をつけて磨いています」。

このように、ご自身の歯の状態をきちんと把握し、「自分ごと」としてケアに取り組んでいます。
私たち専門家からのアドバイスも素直に聞き入れて、次の検診までに実践してきてくださるんです。

お口の健康の主役は、あくまでも患者さんご自身。
私たち歯科医師は、そのお手伝いをするパートナーです。
二人三脚でゴールを目指すような関係を築けている方は、やはり歯を失うリスクが格段に低いですね。

さあ、今日から始めましょう!歯の未来を変えるための小さな一歩

ここまで7つの共通点をお話ししてきましたが、「全部やるのは大変そう…」と感じたかもしれません。
大丈夫です、一度にすべてを完璧にする必要はありませんよ。

まずは、できそうなことから一つ、試してみませんか?

アクション1:今夜、フロスを使ってみる

もしご自宅にフロスがあれば、今夜の歯磨きの時に、ぜひ使ってみてください。最初は難しいかもしれませんが、まずは前歯だけでも構いません。歯と歯の間の驚くほどのスッキリ感を、ぜひ体験していただきたいです。

アクション2:次の食事で「プラス10回」噛んでみる

明日の食事の時、いつもより「プラス10回」多く噛むことを意識してみてください。食べ物の味がより深く感じられたり、唾液がたくさん出てきたりするのを感じられるはずです。

アクション3:かかりつけ歯科医院の予約を取る

もし、しばらく歯科医院から足が遠のいているなら、これを機に検診の予約を取ってみましょう。「痛くないのに予約する」という、その一歩が、あなたの歯の未来を大きく守ることになります。

まとめ

最後に、今日お話しした「歯が一生ものになる人」の共通点を振り返ってみましょう。

  • 口腔ケアの習慣
    1. 自分に合った「一本の歯ブラシ」を大切に使いこなしている
    2. 「歯と歯の間」こそ主戦場だと知っている(フロス・歯間ブラシの重要性)
    3. 一日の終わりに「お口の大掃除」を欠かさない(夜のケアの重要性)
  • 食生活の秘訣
    1. 「よく噛む」ことで、最強の”天然の歯磨き粉”(唾液)を分泌させている
    2. 「だらだら食べ」をせず、お口に休息時間を与えている
  • 歯科医院との付き合い方
    1. 「痛くなる前に通う」のが当たり前になっている
    2. 自分の歯の状態を「自分ごと」として、深く理解している

いかがでしたでしょうか。
どれも、決して特別なことではなかったはずです。

歯の健康は、高価な治療や特別なケアによって得られるものではありません。
毎日の食事や歯磨きといった、日々の暮らしの中にある「丁寧さ」が、10年後、20年後のあなたのお口の健康を育んでいくのです。

この記事が、あなたの歯の未来をより良いものにするための、小さなきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
あなたの歯が、一生ものの大切なパートナーであり続けることを、心から願っています。

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