小児矯正って必要?始めるタイミングと成功させるポイント

「うちの子、歯並びが少し気になるけれど、小児矯正って本当に必要なのかしら?」
「始めるならいつが良いの?」

こんにちは。
東京都文京区で「おだぎり歯科クリニック」を開院しております、歯科医の小田切陽子です。

私のクリニックでは、開業してから20年近く、本当にたくさんの親御さんとお子さんのお口の悩みと向き合ってきました。
その中でも、小児矯正に関するご質問は、年々増えているように感じます。

この記事は、そんな親御さんの素朴な疑問や不安に、長年お子さんたちの成長を見守ってきた一人の歯科医として、やさしく、そして具体的にお答えするものです。

大丈夫ですよ。
子どもの将来を見据えて「今」できることを、一緒に考えていきましょうね。

こちらもおすすめ
矯正歯科│診療のご案内│親切で丁寧な歯医者なら 豊中本町歯科クリニック

小児矯正とは?まず知っておきたい基礎知識

小児矯正と成人矯正の違い

「子どもの矯正も、大人の矯正も、ワイヤーをつける同じものでしょう?」
と思われている方も多いかもしれませんね。

実は、小児矯正と成人矯正は、目的が大きく違うんです。

一言でいうと、小児矯正は「顎の成長を利用して、骨格から整える」治療です。
一方、成人矯正は「すでに生えそろった永久歯を動かして、歯並びを整える」治療なんですよ。

小児矯正(第1期治療)成人矯正(第2期治療)
目的顎の健やかな成長を促し、永久歯がキレイに並ぶための土台を作る歯並びや噛み合わせを整える
対象顎が成長段階にある子ども(6〜12歳頃)顎の成長が終わった方(12歳頃〜)
特徴顎の骨に働きかける装置が中心。将来の抜歯リスクを減らせる可能性がある歯に直接力を加える装置が中心

子どもの時期は、まだ骨が柔らかく、成長する力が旺盛です。
この時期にしかできない、いわば「お口の基礎工事」が小児矯正なんですね。

小児矯正の目的は「見た目」だけじゃない

歯並びがキレイになるのは、もちろん素敵なことです。
でも、小d児矯正の目的は、それだけではないんですよ。

むしろ、お子さんの将来の健康を守るための、大切な意味合いがたくさんあります。

  • 顎の健やかな成長を促す
    顎が小さくて歯が並びきらない、といったアンバランスを整えます。
  • 永久歯がキレイに並ぶスペースを作る
    将来、歯を抜かずに本格的な矯正ができる可能性が高まります。
  • お口周りの癖を改善する
    指しゃぶりや舌で歯を押す癖、口をポカンと開けてしまう「口呼吸」などを改善し、歯並びが悪くなる根本原因にアプローチします。
  • 虫歯や歯周病のリスクを減らす
    歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、お口のトラブルを防ぎやすくなります。

これらはすべて、お子さんが大人になったときの「健やかなお口」という、かけがえのない財産に繋がります。

どんな子どもに必要なの?

「じゃあ、うちの子には必要なのかしら?」と気になりますよね。
以下のようなケースは、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

  • 歯と歯の間にすき間がない、または重なって生えている(叢生)
  • 上の前歯が下の前歯より、かなり前に出ている(出っ歯)
  • 下の歯が上の歯より前に出ている(受け口)
  • 奥歯で噛んでも、前歯が噛み合わない
  • 口を閉じると、いつも口元がポコッとしてしまう

これらはあくまで一例です。
少しでも気になることがあれば、「うちの子だけかな?」と悩まずに、気軽に相談してくださいね。

小児矯正、始めるならいつがベスト?

タイミングの目安:年齢だけで決めない理由

「小児矯正は6歳からって聞きました!」
というお話をよく耳にしますが、実は「〇歳だから」という年齢だけで決めるのは、あまりおすすめできません。

なぜなら、お子さんの成長のスピードは一人ひとり違うからです。
大切なのは年齢よりも、お子さんのお口の中の「状態」です。

目安として、多くの歯科医院では「上の前歯が永久歯に生え変わる6歳〜7歳頃」を一つのタイミングとしていますが、これはあくまで目安。
受け口など、骨格の問題が疑われる場合は、3歳頃から早めにアプローチした方が良いケースもあります。

焦る必要はありませんが、適切なタイミングを逃さないためにも、定期的なチェックが大切なんですね。

親が気づきやすい「サイン」とは

日々の生活の中で、親御さんが「あれ?」と気づけるサインがあります。
ぜひ、チェックしてみてください。

🦷 見た目のサイン

  • 前歯の歯並びがガタガタしている
  • 上の前歯が出ている、または下の歯が前に出ている
  • 笑うと歯ぐきがたくさん見える
  • 前歯の真ん中がずれている

習慣・機能のサイン

  • 指しゃぶりの癖がなかなか抜けない
  • いつもお口をポカンと開けている
  • 舌で前歯を押していることがある
  • 「サ行」や「タ行」が言いにくいなど、滑舌が気になる
  • 食事のときにクチャクチャ音を立てたり、よく食べこぼしたりする

もし一つでも当てはまることがあれば、それはお子さんからの「お口のサイン」かもしれません。

矯正開始の判断に迷ったときの相談先

「チェックリストに当てはまったけど、本当に矯正が必要なの?」
そうやって迷われるのは、とても自然なことです。

そんなときは、ぜひ専門家に頼ってください。

相談先としては、小児歯科や矯正歯科があります。
特に、子どもの矯正を専門に扱っている、経験豊富な先生に相談できると安心ですね。

初回の相談では、レントゲンを撮ったり、お口の中の写真を撮ったりして、現状をしっかり把握することから始まります。
その上で、矯正が必要かどうか、始めるとしたらどんな方法があるのかを丁寧に説明してくれますよ。

成功のカギは“親のかかわり方”にあり

矯正中の子どもを支える声かけと習慣

矯正治療の主役は、もちろんお子さん本人です。
でも、その頑張りを一番近くで支える親御さんの役割は、本当に大きいんですよ。

大切なのは、ポジティブな声かけと、毎日の習慣づくりです。

「装置をちゃんと着けられて偉いね!」
「今日の歯磨きもピカピカだね、気持ちいいね!」

こんな風に、できていることを具体的に褒めてあげると、お子さんのモチベーションに繋がります。
また、装置の装着や洗浄、歯磨きの時間を毎日決まった時間に行うなど、生活リズムに組み込んであげることも、習慣化のポイントです。

「やらされてる」では続かない!本人の気持ちを大切に

小児矯正は、時に本人にとって少し面倒だったり、違和感があったりするものです。
親御さんが熱心になるあまり、「早く着けなさい!」と叱ってばかりいると、お子さんは「やらされている」と感じてしまいます。

「どうして矯正をするんだろうね?」
「歯並びがキレイになったら、どんな良いことがあるかな?」

そんな風に、お子さん自身が「自分のために頑張るんだ」と思えるように、目的を一緒に共有してあげることが何よりも大切です。
本人の前向きな気持ちが、治療を成功に導く一番の力になります。

おだぎり歯科での実際のエピソード紹介

以前、私のクリニックに、少し出っ歯なのを気にしている小学校2年生の男の子が来院しました。
初めは、お口の中に装置を入れるのが怖くて、泣いてしまったんです。

お母様も「この子にできるでしょうか…」と心配そうなご様子でした。

そこで、私たちはまず、その子と「ヒーローの秘密基地」の話をしました。
「この装置は、君のお口の中の歯並びヒーローを守るための秘密基地なんだよ。基地がしっかりしてると、ヒーローたちが安心して活躍できるんだ!」と。

それから、毎回の通院日には「秘密基地の点検、よろしくね!」と声をかけ続けました。
お母様も、ご家庭で「ヒーロー、今日の調子はどう?」と聞いてくださったそうです。

すると、あんなに怖がっていた彼が、自分から進んで装置を着け、歯磨きも頑張るようになったのです。
数年後、彼の歯並びはとてもキレイになり、自信に満ちた笑顔を見せてくれたときのことは、今でも忘れられません。

これは、お子さん本人と親御さん、そして私たちが、同じ目標に向かってチームになれたからこその成功例だと思っています。

費用・期間・痛み…気になる疑問に答えます

費用はどれくらい?保険は効くの?

やはり、費用のことは気になりますよね。

小児矯正(第1期治療)の費用は、使う装置や治療の難易度によって変わりますが、大体30万円~50万円くらいが目安になることが多いです。
残念ながら、審美目的と見なされる歯列矯正は、原則として公的医療保険は使えません。自由診療となります。

ただし、良い知らせもあります。
「噛み合わせが悪くて、食べ物がうまく噛めない」など、成長や機能の改善を目的とした小児矯正は、ほとんどの場合で医療費控除の対象になります。
これは、その年に支払った医療費が10万円を超えた場合に、税金の一部が戻ってくる制度です。
確定申告が必要ですが、家計の負担を少しでも軽くするために、ぜひ覚えておいてくださいね。

矯正期間はどのくらいかかるの?

第1期治療の期間は、お子さんのお口の状態によりますが、1年~3年くらいかかるのが一般的です。
顎の成長を観察しながら、ゆっくりと進めていきます。

その後、永久歯が生えそろってから、必要に応じてワイヤーなどを使った第2期治療(本格矯正)に移行することもあります。
第1期治療で土台が整っていると、この第2期治療の期間が短くなったり、抜歯をせずに済んだりする可能性が高まります。

痛みやトラブル、親としてできること

新しい装置をつけたときや、調整した後の2〜3日は、少し痛みや違和感が出ることがあります。
これは、歯や顎に力がかかっている証拠なので、心配しすぎなくて大丈夫ですよ。

そんなときは、無理せずにおかゆやうどんなど、柔らかい食事を用意してあげてください。
痛みが強い場合は、歯科医院に相談すれば、痛み止めを処方してくれることもあります。

また、装置がお口の粘膜に当たって口内炎ができてしまうことも。
その際は、装置を保護する専用のワックスをお渡しできますので、我慢せずに連絡してくださいね。

小田切先生からのアドバイス:焦らず、でも放っておかないで

親子で向き合う矯正体験

小児矯正は、単なる治療ではありません。
それは、親子で一緒にお子さんの成長と向き合う、貴重な「体験」だと私は思っています。

治療中は、面倒なことや大変なこともあるでしょう。
でも、それを乗り越えてキレイな歯並びと健やかな噛み合わせを手に入れたとき、それはお子さんにとって大きな自信と成功体験になります。

ぜひ、そのプロセスごとお子さんと一緒に楽しむ気持ちで、向き合ってみてください。

「うちの子の歯並び、大丈夫?」の悩みに寄り添って

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
小児矯正に関する様々な情報をお伝えしてきましたが、一番大切なことをお話ししますね。

それは、一人で悩まないでほしいということです。

「うちの子の歯並び、大丈夫かな?」という親御さんのその気持ちは、お子さんへの深い愛情の証です。
でも、その不安を一人で抱え込む必要はまったくありません。

私たち歯科医は、そんな親御さんの気持ちに寄り添い、専門家として最善の道を一緒に探すためのパートナーです。
焦る必要はありません。
でも、気になったときが、相談する一番良いタイミングです。

まとめ

最後に、この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  1. 小児矯正は、見た目だけでなく、顎の成長を促し将来の健康を守る「土台作り」の治療です。
  2. 始めるタイミングは年齢で決めず、永久歯の生え変わりなど、お子さんのお口の状態を見ることが大切です。
  3. 成功のカギは、本人の「やりたい」気持ちを引き出す、親御さんのポジティブな関わり方にあります。
  4. 費用は自由診療ですが、医療費控除の対象になるケースがほとんどです。
  5. 少しでも気になったら、一人で悩まず、まずは信頼できる専門家に相談しましょう。

お子さんの歯並びは、これからの人生を共に歩んでいく、大切なパートナーです。
その健やかな成長をサポートする選択肢の一つとして、小児矯正を考えてみてはいかがでしょうか。

あなたの、そしてお子さんの笑顔が、もっともっと輝くものになるよう、心から応援しています。

Related Posts